なぜ単焦点レンズがポートレートに人気なの?
そもそもポートレート撮影とは
人物撮影のことを指し、さらに被写体が撮られることを意識している状態の撮影をポートレート撮影と言います。
逆に無意識での撮影は「スナップ」と呼びます。
今回は意識している状態のポートレート撮影前提での内容です。
単焦点レンズがポートレートで人気な理由
ポートレート撮影で単焦点レンズが愛される理由は、その特徴的なボケ味と、被写体に集中できるシンプルな操作性にあります。ズームレンズと比べて、単焦点レンズは固定の焦点距離を持つため、より一貫性のある美しい写真を撮ることができます。
1. ボケ味で魅せるポートレート
単焦点レンズ最大の魅力は、なんといってもその美しいボケ味です。開放絞りで撮影すると、背景がとろけるように柔らかくぼけ、被写体を際立たせることができます。このボケ味は、ポートレートに奥行きと立体感を与え、被写体の魅力を最大限に引き出します。
背景をぼかして主役を際立たせる: 人物の表情や仕草に集中できる
柔らかな雰囲気の写真: 女性らしいポートレートにぴったり
奥行きのある写真: 背景との一体感を表現
2. 被写界深度を自在に操る
単焦点レンズは、被写界深度が浅いという特徴があります。つまり、ピントが合っている部分とそうでない部分の差が大きく、背景をぼかしたり、逆に背景もくっきりと写したりと、表現の幅が広がります。
背景をぼかしてポートレートに集中: 被写体の表情や仕草を際立たせる
背景もクッキリと写して状況を伝える: ストリートスナップなどにも活用できる
3. 一貫性のある写真作り
単焦点レンズを使うことで、写真の構図やアングルを意識するようになります。ズームレンズのように気軽に構図を変えられないため、一枚一枚の写真にじっくりと向き合い、より一貫性のある美しい作品を生み出すことができます。
構図を意識した撮影: より印象的な写真に
写真の表現力が向上: 写真に対する理解が深まる
単焦点レンズの選び方
単焦点レンズは、その焦点距離によって特徴が大きく変わります。ポートレート撮影に適したレンズを選ぶためには、以下の点を考慮しましょう。
1. 焦点距離で選ぶ
焦点距離は、レンズが捉える範囲の広さを表します。ポートレート撮影では、一般的に以下の焦点距離が人気です。
35mm: 広角寄りで、背景も少し含めたい場合に最適。スナップ撮影にも使いやすい。広くもなく、狭くもなく、難易度が高いと言われている焦点距離。
50mm: 標準レンズと呼ばれる焦点距離。自然な人間の視覚に近いと言われる。「50mm沼」が存在するほどとても扱いやすい焦点距離で、初心者にオススメ。
85mm: 中望遠レンズ。人物を大きく捉え、背景をぼかしたい場合に最適。被写体との距離感が取りやすく、50mmに続けてオススメな焦点距離。
(番外)105/135mm: 中望遠レンズ。よりクローズアップした画角です。全身よりも一部分を切り取ることが得意。使い方により、とてもボケ感が強くなります。
2. 開放F値で選ぶ
開放F値とは、レンズの絞りを最大に開けたときの明るさを表す数値です。数値が小さいほど明るいレンズとなり、背景を大きくぼかしたり、暗い場所での撮影に有利です。
F1.0/1.2: 圧倒的なボケを得られるが扱いが難しい。
F1.4: 明るいレンズ。背景を大きくぼかしたい場合に最適。
F1.8: 比較的明るいレンズ。コストパフォーマンスも高い。
F2.8: 標準的な明るさ。オールラウンドに使える。
3. オートフォーカス
オートフォーカスは、ピントを自動で合わせる機能です。ポートレート撮影では、素早く正確なピント合わせが重要です。
AF速度: 被写体を捉える速さ
AF精度: ピントが合う正確さ
一般的にオートフォーカスは「ステッピングモーター」と「超音波モーター」が使用されることが多いです。
ステッピングモーター:安い、小さい、そこそこ早い。反面、駆動音がする。
超音波モーター:電光石火の速さ、ほぼ無音。反面、高価で少し構造が大きい。
5. 価格帯
単焦点レンズは、価格帯が幅広いです。自分の予算に合わせて、最適なレンズを選びましょう。
大体、価格と描写の良さは比例します。もし描写を求めるなら少し頑張ってでも良いレンズを買うと幸せになります。
6. その他
レンズの重さ: 長時間の撮影では、レンズの重さも考慮しましょう。
マニュアルフォーカス: ピントを自分で合わせたい方は、マニュアルフォーカスのレンズも検討しましょう。
フィルター径: 保護フィルターやNDフィルターなどを装着したい場合は、フィルター径も確認しましょう。
これ間違えると新しいフィルターを買必要が出てきます。
ポートレート撮影テクニック:単焦点レンズを最大限に活かす
単焦点レンズの魅力を最大限に引き出すためには、撮影テクニックも重要です。ここでは、ポートレート撮影をより一層美しく仕上げるためのテクニックを紹介します。
1. 光を味方につける
自然光: ポートレート撮影には、柔らかな自然光が最適です。窓際や屋外での撮影がおすすめです。
逆光: 髪に光が当たり、輪郭が際立つ美しい写真が撮れます。一般的にポートレートではこの逆光を多用します。
順光: 柔らかく自然な表情を捉えたいときに有効です。証明写真などはこの順光です。
2. 背景を意識する
シンプルな背景: 被写体を際立たせるために、シンプルな背景を選びましょう。
背景ぼかし: 単焦点レンズの大きな特徴である背景ぼかしを活かして、被写体に集中させましょう。ゴミゴミした街中での撮影の場合、ボカすことで余計な情報を削ります。
背景の色: 被写体の服装や雰囲気に合わせて、背景の色を選ぶとより美しい写真になります。
3. 構図を工夫する
三分割構図: 被写体を画面の端ではなく、少し内側に配置することで安定感と奥行きを出すことができます。
対角線構図: 動感や躍動感を表現したいときに有効です。
黄金比: 視覚的に安定感のある構図で、美しい写真に仕上がります。
など、構図は大量のありますので、研究要素ですね!
4. ポージング指導
自然な笑顔: 緊張を解き、自然な笑顔を引き出すことが大切です。
体のライン: 体のラインを意識することで、より魅力的な写真になります。
手の使い方: 手の使い方は、写真の印象を大きく左右します。
5. ピント合わせ
目にピントを合わせる: 人物の目にピントを合わせることで、生き生きとした表情を捉えることができます。
背景との距離: 背景との距離によって、ボケ具合が変化します。
6. 編集で仕上げる
レタッチ: 明るさ、コントラスト、彩度などを調整して、より魅力的な写真に仕上げましょう。
単焦点レンズの特性を活かし、これらのテクニックを組み合わせることで、オリジナリティあふれるポートレート作品を作り出すことができます。
おすすめの単焦点レンズ紹介
ポートレート撮影に最適な単焦点レンズを、焦点距離別にいくつかご紹介します。なるべく上位レンズではなく、普及モデルを優先的にご紹介します。
35mm 単焦点レンズ
特徴: 広角寄りで、背景も少し含めながら人物を大きく捉えられます。スナップ撮影にも適しており、自然な雰囲気の写真が撮れます。
Canon RF35mm F1.8 MACRO IS STM
安価ながら簡単なマクロ撮影まで可能。
Nikon NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
S-Lineのレンズながら比較的安価かつコンパクトで取り扱いやすいレンズです。
Sony FE 35mm F1.8 FE
コストパフォーマンスが高く、35mmに興味があれば是非持っておきたい。
50mm 単焦点レンズ
特徴: 標準レンズと呼ばれる焦点距離で、人間の視覚に近い自然な画角を提供します。ポートレート撮影だけでなく、スナップや風景撮影にも幅広く使えます。初心者でも扱いやすく単焦点を初めて買うなら50mmがおすすめです。
Canon RF 50mm F1.8 STM:
いわゆる「撒き餌レンズ」です。とんでもなく描写が良いのに、値段もかなり安く、キヤノンユーザーなら1本持っておくべきレンズです。
Nikon NIKKOR Z 50mm f/1.4
f1.8よりも明るいf1.4がNikonはラインアップされています。
Sony FE 50mm F1.8
キヤノン同様「撒き餌レンズ」です。こちらもソニーユーザーなら持っておきたいレンズ。動画用途でも使いやすいです。
85mm 単焦点レンズ
特徴: 中望遠レンズで、人物を大きく捉え、背景を大きくぼかして美しいポートレートが撮れます。
Canon RF85mm F2 MACRO IS STM
手軽にポートレートレンズを手に入れるならこちら。マクロ撮影も可能なため、被写体に近づきクローズアップ撮影もできます。
Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
S-Lineのため描写は折り紙付き。主力にもなり得る1本です。
Sony FE 85mm F1.8
小型軽量で、女性にも扱いやすいレンズ。
レンズ選びのポイント
カメラボディとの相性: 自分の使っているカメラボディとの互換性を確認しましょう。
予算: レンズの価格帯は幅広いため、予算に合わせて選びましょう。
描写性能: 出来れば実際に店頭でレンズを試して、自分の目で描写を確認しましょう。
大きさ・重さ: 長時間持ち歩くことを考えると、軽量なレンズがおすすめです。
その他のおすすめレンズ(例)
85mm: Carl Zeiss Batis 1.8/85
これらの情報はあくまで一例です。 実際に購入する際は、カメラショップで相談したり、インターネットのレビューなどを参考にしながら、自分にぴったりのレンズを見つけてください。